2021.3.8
汽水空港がよくお世話になっているAさんが、ターミナル2のそばにプライベートパブリックな場所をつくろうとしている。疲れた人にはおにぎりと味噌汁をふるまい、時々は託児所として機能し、藍染や機織りもできる工房のようなスペース。その為の空き家も見つけ、今日は大家さんと交渉してきたらしい。
その家は下水が通っておらず、床や壁もかなり手直しが必要な状況だったらしい。大家さんとしては借りる人も見つからないし、直す金もないから、ずっと空き家状態にしておくくらいなら壊して更地にしたい気持ちとのことだった。Aさんも潤沢な資金はない。少しの直しですぐに使えるような状態が理想だったが。
Aさんの思い描くスペースが実現することは汽水空港にとっても嬉しい。ターミナル2で作業した後におにぎりと味噌汁食べたいし、Aさんも共に作業ができれば賑やかになる。きっと楽しいに違いない。Aさんは年に三ヶ月程しかそのスペースを使わないから、留守にしている間、誰かが住んでもいいよと言う。「難しい権力」の家として使ったらどう?とも言ってくれた。しかし、それが出来ないのが「難しい権力」の難しいところだ。
「難しい権力」の最も大事なポイントは住む人の選別方法だ。おれは「縁」とか「和」とか「絆」とか「助け合いの輪」とかいう言葉に依りかかりたくない。入居者を選ぶ基準が「モリテツヤとどれだけ仲が良いかに依る」というプロジェクトになってしまっては元も子もない。無縁者にも開くことをしていかなければ、それは権力の乱用と変わらない。
そして、入居者が魅力的なプランを持ち、その実現可能性が高い場合でも、その魅力を理由に入居することを決定したくない。プレゼンが上手な人、「生産性(嫌な言葉だ)」が高い人、そういった人を優先的に入居させることもしたくない。その人の持つ能力を問わない。
そして、その人が抱えた困難の重みもおれは問わない。人の人生を自分の物差しで評価し、入居できるかどうかを決定したくない。
だからAさんの思い描くスペースが実現することは、個人的にはとても助かるし嬉しいが、Aさんが入居することを前提に「難しい権力」をスタートするということはできない。というようなことをAさんに説明した。難しい権力はとても難しい。
ではどのように入居者を決めるのか。いまのところ、あみだくじにしようと考えている。
なんだ、結局運かよ。という声が自分の中から聞こえてくる。どうするべきかは今も考えているところだ。
※「難しい権力」の家はシェアハウスではありません。生活のサポートもしません。ただ家賃のかからない家として入居者に提供するというプロジェクトです。家の使い方、暮らし方も指図しません。入居者が誰かと共に暮らしたければそうしたらいいと思っています。
2021-03-10 18:11:57
「難しい権力」について
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