"文/⼩出正吾
絵/河野鷹思
発行 アノニマスタジオ
こころをはぐくむおはなし
1950年に誕生した名作、新装復刊
働くこと、感謝すること、⼈間の欲や真心、自分らしさとはなにか、音楽を奏でる虫たちのお話など、心に響く物語を素晴らしい挿絵と楽しめる児童⽂学です。
「りんごの村」「二つの自動車」「ふるぐつホテル」の3 作品を収録。
編集者のおすすめポイント
1950 年に刊行され、絶版となっていた児童文学作品を現代の読者にも手渡したいという願いから生まれた⼀冊です。作者の小出正吾氏は戦前から戦後、長らく児童文学に貢献された作家であり、子どもたちへのあたたかいメッセージが物語に込められています。原書で装丁、挿絵を手がけた河野鷹思氏は日本のグラフィックデザイン界の先駆けの存在で、デザイン性とクオリティは時代や国を超えて通用する力強さがあります。新しい作品として読者に届け、子どもと共に読む大人には、この作品が生まれ、読まれた時代にも目を向けてほしいと願っています。
著者略歴
文 小出正吾(こいでしょうご)
1897年静岡・三島に生まれる。中学時代に受洗しキリスト教信者となる。早稲田大学商学部卒業。元明治学院高等学部社会事業科教授。日本児童文学者協会会長、日本児童文芸家協会顧問、アジア・アフリカ作家日本委員会会員を歴任。戦後、東京より出生地へ戻り、三島市教育委員長を務める。生涯で150冊以上の著作や翻訳を行う。
代表作に、絵本『のろまなローラー』(絵・山本忠敬/福音館書店)、童話『イソップのおはなし』(絵・三好碩也/のら書店)などがあり、自身の来歴を綴った作品に『童話から童話へ ある児童文学者の回想録』(1980年/教文館)がある。1990年に永眠。
絵 河野鷹思(こうのたかし)
1906年東京・神田に生まれる。東京美術学校図按科卒業。松竹キネマ宣伝部に入社し、映画広告や美術を担当。1936年に独立し、広告、装幀、雑誌表紙、挿絵、映画美術、舞台装置等を手がけ、戦時中はジャワに徴用。日本宣伝美術会創立委員、「グラフィック‘55展」に参加、綜合デザイン事務所デスカ設立。世界デザイン会議実行委員、大阪万博日本館展示設計、札幌冬季五輪ポスターのデザインを手掛ける。
女子美術大学教授、愛知県立芸術大学学長、日本人初の英国王立芸術協会員。一九八六年に東京ADC「Hall of Fame」選出。1999年に永眠。
復刊によせて
『りんごの村』が実業之日本社から刊行されたのは昭和二十五(⼀九五〇)年三月のことでした。作者は児童⽂学作家として活躍された小出正吾【こいでしょうご】氏。小出氏は絵本、童話、翻訳などの分野で、大正から昭和にかけて⼀五〇冊ほどの著作を生み出し、戦前、戦中、戦後の出版界に大きく貢献されました。キリスト教の崇高であたたかいヒューマニズムの視点を根底に、誰にでも親しみやすい物語として書かれた本書の内容については、氏自身の志が伝わる「あとがき」をお読みいただくのがいちばんだと感じます。
装丁と挿絵を手がけたのは、グラフィックデザイナーの河野鷹思【こうのたかし】です。この度の復刊は、河野鷹思の娘であり、自身もデザインやイラストレーションの分野で制作を続けている河野葵(葵・フーバー・河野)の「これからの時代にもこの本をのこしたい」という願いからスタートしました。
河野鷹思アーカイブ(「復刊によせて」より一部抜粋)
"版元HPより